ミャンマー初の世界遺産”ピー”を歩く | ヤンゴンプレス(Yangon Press)| 日本とミャンマーをつなぐ情報誌 ミャンマーのニュースを日本にお届け

ミャンマー初の世界遺産”ピー”を歩く

-Pyay- ピュー (現在名: ピー)

 

Sri Ksetra ”タイェーキッタャー遺跡”でピュー王朝文化の栄華を見た

 

 ミャンマー中央部のエーヤーワディ河沿いに位置するハンリン(Hanlin)、ベイタノー(Beikthano)、タイェーキッタャー(Sri Ksetra)の3遺跡は、ピュー王朝時代の文化をしのばせる貴重な遺跡群だ。ここは2014年6月22日にカタールのドーハで開かれたUNESCOの”第38回世界遺産総合会議”で、ミャンマー初の世界遺産に認定された場所でもある。そのおかげで、認定後は観光客が増えたと、ミャンマー文化省は発表。そこで今回は古代ピー遺跡のひとつである”タイェーキッタャー遺跡”について紹介しよう。この地名はパーリ語だが、ビルマ語では“優雅な地”という意味を持つ。

 

 

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掘り出し中の広大な古代壁

 

 

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世界遺産認定の印章がこの地に

 

 

 

【精密に造られた古代の都】

 ”タイェーキッタャー遺跡”は、ピューの遺跡群の中では最も精巧に構築された都で、全体の形状は円形である。現在のピー(Prome)街から東へ約5.8㎞ほど離れており、ナウィン(nawin)渓谷の西南、河沿いにあるHmaw Za村に位置する。

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Beik Tha No女王の貴族のお墓跡

 

   この古代の都は、じつに1,840ヘクタールもある王宮への入場門(シティーゲート)を擁し、ゲートの外周にも町、村などが地区別に作られていた。地域の気候は、中央部の乾燥地帯と南側の湿地帯に挟まれた場所という特色を持つ。また、この古都は、国の大動脈であるエーヤーワディ河からわずか5㎞の距離に位置し、都と河の間にはミィンバーフ山脈が連なる。豊かな自然に恵まれた地だ。周辺は鉄鉱石の産地としても有名で、かつては鉄を精錬する鍛冶屋が多かったという。

【王朝文化を中心に繁栄を極めた都】

 ピュー族は水源管理、建築用のレンガ、鉄製の道具作りなどに優れた技術をもっていたという。古代の日常、経済活動に欠かせない高度な文化を有する民族だったのだ。こうした技術と文化を背景に、ピュー王朝は紀元前2世紀から紀元後9世紀にかけて、東南アジアではもっとも進んだ息の長い文明を創造していた。

 当初は土器による製品が多かったが、火焼き入れなどの習慣を身に付け、徐々に精密なレンガなどを生産するようになった。その片鱗が補修されたシティゲートの城壁などにもうかがえる。ピー族の古代遺跡群の調査によると、城壁に囲まれた壮麗な街並みに農耕エリア、池水や運河、お堀を作り、郊外には村々や宗教用記館などを整然と配置した。また、都の中心部は厚くきめ細かいレンガで王宮と官邸を囲む。壁内の農耕地への水源確保も高度な技術を駆使していると記録にはある。

 タイェーキッタャーを歩いてみると、かっての王朝時代の面影がそこかしこに残る。王宮跡や宗教用建造物は、耐久性のあるレンガを厳選したことがわかる。一般の民家は、竹や木の素材を使用し、王宮を中心とした当時の都の繁栄ぶりを垣間見ることができる。

 余談だが、西暦801年には、中国のタン(Tang)王朝にピュー族の使節団が訪問し、文化を披露するために演奏家などを帯同した。その当時の音楽、舞踊や楽器などについて、中国の歴史書にも書き残されている。

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ピュー族の芸能者たちの化石がその歴史を語る

 

 

【中国に敗れて滅亡した古都】

 8世紀後半~9世紀の前半にかけて、タイェーキッタャーは中国と交戦状態になり、ついに力尽きて滅亡した。ピュー族の使節団の訪問のかいもむなしく、約3,000人のピュー族が捕虜として連行されたという記録がある。

 外国の勢力に侵攻されたとき、大半のピュー族はバガンエリアに避難移住したという。現在、バガンにはピュー語で書かれた碑文やピー王朝時代の仏塔などを見ることができる。その後11世紀になるまで、バガンはピュー族の文化的影響を受けた。バガン王宮のチャシッター王の碑文には、タイェーキッタャーの都は、「仏教的に希望の持てる優雅な地」であり、バガンの王族たちにもかなりの影響を与えたという記述がある。

 今回は、世界遺産のタイェーキッタャーを取材するにあたり、”ミンガラーガーデンリゾート”に宿泊した。このリゾートは遺跡に最も近接していて便利だった。現在のピー”Pyay(旧Prome)”にはかつて空港があったが、航空機の震動が遺跡へ影響を与える懸念があったため、20年前に使用停止となった。

ミンガラーガーデンリゾートの客室

ミンガラーガーデンリゾートの客室

ピーはヤンゴンとバガンを結ぶ途中にあり、ヤカイン州のガパリビーチなどへも最短でいける街なので、ミャンマーの重要な観光ルートとなっている。現在(2015年末)、ピーにはホテル8件、モーテル2件、ゲストハウスが4件あり、客室数は計334室あるという。

 ちなみにこの街は、長らくミャンマーを独裁的に率いてきた故ネ・ウィン氏の生まれ故郷でもある。ヤンゴンのPyay Rdはその名の通り、このピーまでネ・ウィン氏が作らせたという。徳川将軍家が菩提寺のある日光街道を整備した経緯にも似ている。

 

【地元の方が魅力を語る】

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1998年から”ミンガラーガーデンリゾート”に勤務するGMのU Myo Aung さんにお話をうかがうことができた。

「時代は明るくなりました。安全になり見学や観光が楽しめる状況となりました。農民が多く、気候も爽やかで野菜や植物が豊富に収穫できます。大根、キャベツ、豆類、胡瓜などがヤンゴンの野菜市場へ出荷されています。UNESCOに認定されたおかげで、お客さんが増えてきました。いいことだと思います。ただ自然や環境保護には注意したいですね。エーヤワディの水源に恵まれ、特に魚が美味しいです。この地方自慢のライスサラダ、田舎の茶葉サラダなどを、どうぞ召し上がってみてください。ヤンゴンからバスで6時間程度で、ヤンゴ~タイェーキッタャー~バガンのツアーも流行ってきています。是非気軽にお越しください」と、ピィ―の街の魅力を語ってくれた。

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静寂なミンガラーガーデンリゾート園内

【外国人観光客の訪問が増大】

 世界遺産の”Sri Ksetra Pyu Ancient City(タイェーキッタャーピー遺跡地域)”へは、2014年4月~2015年5月までの1年間で、外国人客が8,768人で、ローカル客は3万人近く訪問したという。昨年の4月~12月までは外国人観光客は3548人来訪した。さすがに雨季は客は少なくなるが、「10月~12月は絶好の季節になります」と、ピュー遺跡ゾーン内のタイェーキッタャー博物館の担当者が語った。

 現在、外国人観光客が多く、ピー古都地域を周回するために馬車、牛車、車、バイクなどの交通手段が用意されている。人数が少ないツアーグループの場合は、ツーリストポリスも付いていただけるという。外国人客の博物館への入場料は5,000Ks、遺跡ゾーン内観光料は5,000Ksであり、ミャンマー人は無料となっている。

 ピーは世界遺産として認定されたからではなく、豊かで優雅だった王朝時代の栄光と文化的余韻は現代のビルマ族まで伝承し、ミャンマー人の誰もが心に書き留める歴史的遺産でもあるのだ。

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現代の”ピー”町の景観

【取材・執筆: ティンギ・アウン YangonPress副編集長】

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