人類の遺産ともいうべき仏教遺跡はどうなったのか、正確な情報を求めて現地へ緊急取材を敢行した | ヤンゴンプレス(Yangon Press)| 日本とミャンマーをつなぐ情報誌 ミャンマーのニュースを日本にお届け

人類の遺産ともいうべき仏教遺跡はどうなったのか、正確な情報を求めて現地へ緊急取材を敢行した

多方面へのインタビュー

 

①文化省考古学局バガン事務局長 U Thein Lwin

「被害を受けた遺跡の現状を正確に述べると、現在は35塔のパゴダの立入が禁止されています。雨季ですからまずは雨漏れを防ぐ作業とがれきのあと片付けが優先されますね。ユネスコを含め、国内外の技術者の協力で遺跡保守計画を行うのも大事ですが、観光業にも影響が出ないように、検査後に大丈夫だと判断されたパゴダについては順次再開していく予定です。9月4日にユネスコが現地入りし、中国、日本などからも優れた建築家の方々が訪れます。そうした専門家の方々の指示を仰ぎ、私たちも最良の選択をし、かつての芸術の復元に務めます。

現在、バガンには11世紀の遺跡群が3千塔以上残っています。地震で被害を受けた遺跡数を397塔と述べましたが、それはレンガのはがれたパゴダを含めた総数です。だから、大きな被害を受けたのは15~20塔にしか過ぎないのです。割合でいうと、わずか1%程度の被害と言えます。他の全ての遺跡はこれまで通りに観光できますので、安心して旅行してください。観光客の方々も再びやって来ていますので、どうか心配なさらずに観光に来てください。」

 

②ミャンマーホテル協会バガン地区責任者 U Zaw Weik

「11の立ち入り禁止になっているパゴダは、いつ再開されるか、まだメドは立っていないようです。検査後、3週間経たないと正確なことはわからないでしょう。有名なパゴダがたくさんありますから、観光客の減少は心配していません。仏教徒にとっては、形が整ったパゴダでないと、どうしても信仰上縁起が良くないと考えられますからね。そうした慣習があるから、修復しないといけないでしょう。私の考えでは、形が整っていなくても、仏陀の遺産は貴重な遺跡として保護し、昔から現存していた元の形を保守したいと考えます。

だから復元ではなく伝統を重視しましょう。ただし、地元の方々の意見を無視してはいけません。そのギャップをうまく調整し、遺跡保護を進めて行きたいと思います。今はボランティア200人で道路を直していますが、あえて寄付は求めていません。自主的に寄贈される方の浄財で成り立っています。今進行中の道路補修プロジェクトは、あと10日間ぐらいかかると思います。」

 

③前ガイド協会会長/バガン遺産保存委員会メンバー U Zaw Win Cho

「まずパゴダを閉鎖する際には、観光業で成立している多くの人々のことをよく考えるべきでしょう。地域経済のことを忘れてはいけない。朝市やナイトマーケットとか、観光をしながら伝統的慣習を知り、ここしかない土産を売りにしたり、何か独自のインフラを造ったほうがいいかと思いますね。やっぱり国が保護している観光地であり、ツーリズムと伝統をどうやって両立させていくか考えたいですね。あえて言わせてもらえば、朝日夕日で有名な『シュエサンドーパゴダ』だけではなく、ほかの名所も再開したほうがいいかと思います。長期的な展望で考えたいですね。登ってみて眺望の良いところをたくさん開放して、訪問客を集めパゴダの存在感を高めるべきなんです。

UNESCOには異論はありません。ただし、せっかくこのエリアを保護保持して頂けるなら、この際、不正なホテルや建物を検査して、地元の住民にも認識してもらいたいですね」と。1989年に京都の尾谷大学で3年間研究し、1998から米国のボストンに移住し、現在英語のガイドをするU Ye Myint さんならではの厳しい意見だった。U Ye Myintさんはバガン出身で2012年から米国で8ヶ月間、バガンで4ヶ月間観光案内をしている。

 

④スラマニ寺院 Sulamani Pagoda僧院長  U Tay Za Ni Ya

「地震当日は寄付に来られた方々と一緒に僧院にいましたよ。ものすごい音を立てながら、パゴダのKwan Taung (鉢のような部分)が転がり落ちてきました。そのとき、1975年の地震の光景が目に浮かびました。しかし前回(1975年の地震)の方がかなりひどかったです。揺れ方が違う。1975年のときは横揺れで、今回は縦揺れだった。下から地層が突き上げるような感じでしたね。

どのような理由で、またどのような経緯かわかりませんが、1990年後の軍事政権の修復には、一言も口出しできずに勝手に復元されてしまった。本来なら、遺跡っていうのは昔ながらの匂いや雰囲気を大事に残すものです。万が一その時に修復していなければ、今回修復部分が崩落したりせずに済んだかもしれません。だから元に戻ったような感じです。今回もまた、新しい形を付け加えたりする修復では余計に危ないと思いますよ。国内外の技術者には出来る限り元の形になるよう慎重に補修作業に取り組んでいただきたいと思います。今の政府は伝統を重んじて、昔からの遺跡の形をしっかり保守しながら修復してくれると期待しています。」

スラマニ寺院修復の経緯を以下の写真でご確認頂きたい。

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⑤サイタナジーパゴダ Say Ta Nar Gyi Pagoda管理人 Ko Zaw Naing

「私はこのパゴダエリアで30年間暮らしています。目の前で地面が揺れ、恐ろしい音でレンガが埃の中から舞い落ちてきました。当時は子供三人と母親を抱いて身を低くして防御するしかなく、とても怖かったです。ですから災害後は家族を抱いて泣きました。その後はこの私がいたパゴダは閉鎖されました。1975年にも地震がありましたが、前回のほうがひどかったですね。そのときの地震の後で修復された新しい部分が崩れました。AD 11世紀の技術に追いつかなかった新しい部分だけが、崩落してしまったようです。私の意見では今後はこれ以上傷つくことを阻止したいです。また新たに修復された部分が壊れても、1千年前の技術を壊すだけなら、直さなくてもいいと思います。私はこのSay Ta Nar Gyiパゴダ内で砂絵を売っていますが、残念ながら今はパゴダへの観光客立入は外のみにされています。」

 

⑥観光車運転手 Ko Win Zaw Oo

「1980年生まれですので、1975年の地震は経験していません。でも、パゴダを修復していた時は高校生でした。地元の人々の提案や感想を聞かずに修復されていたようです。ですから今回の修復にはじっくり時間をかけて、しっかりと調査研究してから行うべきだと考えます。40年前と同じ方法で取り繕い、表面的な補修でしたら元の形を保守したほうがいいと思います。」

 

⑦ヴィニトゥパゴダ WiNi Taw Pagoda警備員 U Thaung Hlaing

「目の前でパゴダが揺れてました。どうしようもなかったですね。でも、揺れた後にはびっくりしました。1975年の地震前の元の形に戻ったのです。というのは、新しい部分だけ落ちたからです。皮肉にも王様時代の美しさが現れたのです。緑の中の古代遺跡に関心がある方なら、今訪れてみたらいいですね。時期的には最適ではないですかね。」

 

 まとめ

多方面へのインタビューにより、やはり被害を受けた箇所を修復することにはかなり慎重になるべきだとの意見が多く聞かれた。日本でも大きく取り上げられたスラマニ寺院などは、今回の地震により「以前の形に戻った」との声も聞かれる。1990年代以降に人の手によって大規模な修復をされた箇所が崩れ落ちるなどしているためだ。これまでのバガン修復の経緯を知る人物は特に、経験則に基づいた冷静な目で最良の選択を望んでいる。

また、現地を実際に取材して感じたことだが、インタビュー①のU Thein Lwinも言われている通り、観光に訪れるにはほとんど心配が要らない。地震の影響を全く受けなかったパゴダ(仏塔)が大多数であるし、安全面で懸念のある一部の仏塔に関しては入場を禁止している。現地を最も知る関係者と我々では被害の認識に大きな差があったことは、はっきりお伝えしたい。

ミャンマー随一の観光名所、世界三大仏教遺跡である『バガン』へ訪れる予定の方には、地震のせいでこの機会を逃して頂きたくない。『バガン』を愛する関係者からそういった想いがひしひしと感じ取れた。また、これからミャンマーの季節は乾季に移り変わり、絶好の観光シーズンとなる。是非一度訪れてみることを我々からもお勧めしたい。

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